先生観察日記


「それまでに、俺に彼女ができるかも知れないぞ?

もしかしたら、君に彼氏ができるかも知れないだろ?

仮定の話はしても仕方がない」


「でも……」と言いかけた彼女の話を遮って、先生は話し続けた。


「とにかく、君の気持ちは嬉しいけれど、応えることはできない。

俺なんか見返す位、いい大学に入っていい彼氏を見つけろよ」


ふられちゃった……。

私がふられた訳ではないのに、私の気持ちまで否定されたような。

それでいて、彼女の申し出を断ってくれて、ほっとした私がいた。


ふうっとため息をついて、そおっと階段の影から顔を出すと……



「やっぱり、ここで盗み聞きしてたのか。

趣味悪いぞ、お前。」


「げっ!! ご、ごめんなさい!!

でも、わざと聞いてたんじゃなくて、その、準備室に行こうとしたら道が塞がってて……出るに出られなくて……って、先生も聞かれてたの分かってたの? 趣味悪っ!!」


「仕方がないだろ。

あの場で告られるとはちょっと想定外だったからさ。

お前はともかく、他の教員とか夜警さんにみつかるんじゃないかと思って、冷や冷やしてたんだぞ!」


「ふ~ん。まんざらでもなさそうだったけど?」


「じゃあ、何て断れば良かったと思う?」


そう言った先生は、今までになくムッとした表情だった。

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