先生観察日記

お母さんはもう、納得してくれたみたい。

私と同じようにお涙ちょうだいモノに弱いお母さんだもん。

でも、お父さんがそれを聞いてなお、食い下がった。


「しかし先生、菫が一人暮らしなんかして、何かあったらどうするんですか!?」


「何か、とは具体的におっしゃいますと……?」


先生がすまして聞いている。


「つまり、変質者に襲われたり、泥棒に入られたり、……変な男ができたりしたら……」


「そうですよね、ご心配はよくわかります。

しかし、京都は大変治安のいい所です。

街中が観光地ですから、北海道より安全かも知れませんよ。

泥棒や変質者が気になるようでしたら、なるべく防犯設備の整ったマンションに住んで、本人が気をつければ……」


「でも!

変な男ができない保証はないでしょう!

こっちからは見えないから心配で心配で……」


ついに私がぶち切れた。


「お父さん!

私がそんなに信用できないの!?

いい加減子離れしないと恥ずかしいよ!

私がそんな変な男に引っ掛かる訳ないでしょ!」


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