先生観察日記

先生、お願い。

私の本気から逃げないで。


椅子に座ったままの先生を見下ろすように近づいた。

今までの人生で、多分一番緊張してる。


先生は固い表情を崩さない。

それでも、勇気を振り絞って言おうとしたその時。


「……それ以上、言うな」


また、先生の真剣な目。


「どうして……?

どうして聞く前から言わせてくれないの?」


先生は一度、ふぅっとため息をついて、私を見上げた。


「いつ、ここを離れるんだ?」


意表をついた質問に驚きながらも


「4月4日の予定です」


それを聞いて、先生はわずかに微笑んだ。


「頼むから。

何も言わないでそのまま家に帰りなさい。

お前は俺にとって、一番手のかかる、可愛い教え子だよ。

その関係を壊したくない」

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