先生観察日記


『食べ終わってから、先生に案内されてピアノの部屋に入った。

防音室になっていて、部屋にはグランドピアノとコンポだけが置いてある。


「さあ、もう一度はじめから通して弾いてみて」


先生が私のすぐ横に座って、譜めくりをしてくれようとする。

ただでさえ上手く弾けないのに、緊張してますます弾けなくなる。


「先生……自分でめくれますから」


「……もしかしたら僕のこと、警戒しているの?」


「そうじゃないです。ただ、先生がすぐそばにいると緊張しちゃって……」


「ふふっ。少しは警戒したほうがいいよ。
もしかしたら、こんなことをされるかも知れないから」


え! と思った瞬間、先生が私にキスをしてきた。


「騒いでも無駄だよ。ここは防音室なんだから」』

 








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