先生観察日記

「お前、国語だけはできるんだけどなあ……」

「はあ」

「社会、何とかならんか?」

「頑張ってみます……」

「じゃあ、松本先生の講習を受けろ。日本史やめて政経にしておきなさい」

「へ?」

「短期間で偏差値上げるなら、政経がいいぞ」


担任からもらった「進学講習スケジュール」を手に、仕方なく松本先生を探した。

もう、講習受講の締め切りを過ぎているから、直接交渉しなくてはならない。

あ~、めんどくさ。

でも、確かに政経のほうが日本史より教科書薄いし。

丸暗記するなら、絶対政経のほうが楽、だよね。


社会科準備室のドアをノックする。

「はい、どうぞ」

あ、やっぱりここだった。

「失礼します」

中は4つの机と、様々な棚に資料が積まれた空間。

丸2年この学校に通ってて、初めて入ったかも。

奥の机に、松本先生が1人でぽつんと座っていた。
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