先生観察日記
「毎年、学校祭のたびに思い出すんだ。
今日の13回忌法要も、俺だけ欠席。
日曜日とは言え、学校祭に年休取れないもんな。
担任持ってたら、気が紛れるんだけど、今みたいな立場だとダメだな。
暇だと余計な事ばかり考えるからさ」
一瞬、先生の背中が痛々しく見えた。
高校1年の夏。
先生は、どんな思いでこのカメラを形見分けしてもらったんだろう……。
「不況と、デジカメの普及、全国チェーンの子ども写真館が出店してきたことによる顧客離れ。
さらに学校の統廃合で、卒業アルバムの発注も減って、写真館は俺が中3の時に倒産したんだ。
親父はその頃、自分の店も家も失って、失意のどん底にいた」
「……」
何て言葉をかけていいのかわからなくて、私はただ、黙って聞いていた。