先生観察日記

 
「なのに、自分の事しか考えなかったバカな中3のガキは、

『俺の進学はどうなる?』

って、親父に詰め寄って叫んだ。

余計なストレスを与えて、親父の身も心もボロボロにするとも気づかずに……。

それからすぐに癌で逝ってしまった。

謝ることもできなかった。


残ったのは、このカメラと、親父に対する後悔だけ。

最低な息子だったよ」


それは、違う。

だって、先生はきっとお父さんのことが大好きで、だから今でも大事にそのカメラを持ち歩いてるんでしょう?

お父さんだってきっと、先生の事をずっと心配しながら病気と闘ってたんだよ。

私のおばあちゃんがそうだったもの。

きっと、お父さんならなおさらその想いが強かったはず。

うまく言えないけど、今の先生があるのは、お父さんが見守っているから。

こんなこと、高校生の私なんかに言われたくないかも知れないけど、伝えなくちゃ。


天国のおばあちゃん、私に勇気をちょうだい。

しゃくりあげそうになりながら、大きく息を吸った。



< 90 / 330 >

この作品をシェア

pagetop