さよなら、ありがと。
□□□□□

「美音、」


もう一度呼ばれてようやくあたしは意識を取り戻した。


「…瑛太?」


その時あたしは自分の体に学ランがかけられていることに気付いた。


慌てて立ち上がる。


「嘘っ!あたし寝ちゃった!?」

「おう。30分くらい?」

「30分も!?ってことは、午後からの予行練習は!?」

「とっくに始まってる」


慌てふためくあたしとは正反対に、瑛太は呑気に口笛なんか吹いちゃって。


ありえない。明日は卒業式なのに。


「最悪。この三年間一度もサボったことないのに…」

「真面目だね―。別になんとかなるっしょ」


どこからその自信が湧いてくるんだろう。


今更体育館に向かうのもなんだか気が重くって、結局あたしはもう一度腰を下ろした。


それに、瑛太の側を離れるのがなんだか勿体無い気がしたから。

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