さよなら、ありがと。

このまま時間が止まって、明日が来なければ良いのに。
卒業なんて、ずっと来なくて良いのに。


無言のまま二人で曲を聴き、最後まで聴き終ると瑛太が不意に呟いた。


「もう明日卒業なんて、早いもんだなぁ。俺まだ実感ないよ」

「…うん。高校生活なんて、あっという間だったね」

「本当、楽しかったよなぁ。三年間」


今まで言い尽せないくらい、多くのことがあった。


嬉しかったことも、楽しかったことも、悔しくて、悲しくて泣きたかったことも、全部分けあってきた。


何気ない日々も、二度と戻ってくることはなくて、毎日が思い出となっていった。


どうして、人は限りある時間の大切さを忘れてしまいがちなのだろう。


楽しい日々は、そんなことを考える時間すらあたしたちに与えずに過ぎていく。


もっとちゃんと分かってたら、今あるこの時を満足して過ごしたのに。


何で、もっと大事に出来ないんだろう。


毎日も、思い出も、瑛太の隣にいることも。


最初から分かってたじゃない。
いつかは終りが来るんだって。


なのに、何で素直になれなかったんだろう。


今ならわかるよ。やっぱりあたしは瑛太が好き。大好き。離れたくない。ずっと側にいたい。


次々と気持ちが溢れてくる。
どうしよう、あたし。もう止まらないよ。
瑛太がすごく好きだよ。

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