さよなら、ありがと。
沈黙が流れる。
言った後、瑛太の顔を見るのが怖くて思わず目をつむってしまった。
瑛太は何て思っただろう。勢いに任せて言ってしまったけど、瑛太の気持ちなんて考えてなかった。
もし否定されたら?
拒否されたら?
不安だけが広がる。
不意にあたしの体はすっぽり温かいもので包まれた。
驚いて目を開けると、それは瑛太で。
大好きな瑛太で。
あたしの心臓がいっそう暴れだす。
完全に固まってしまったあたしの耳元で、はーと溜め息が聞こえた。
「何で、俺がいつも裏庭にいたか知ってる?」
逆に質問されて訳がわからなくて、あたしはただ首を振ることしか出来なかった。
そんなあたしに、ははっと笑って。
「美音に、会いたかったからだよ」
信じられない。まさか瑛太がそう思ってくれてたなんて。
それだけでびっくりなのに、瑛太の次の言葉にあたしは疑った。
「俺も好きだよ、美音」
あたしは都合の良い夢をみてるんじゃないかな。
だって、じゃなきゃ。
「うそ…」
「嘘じゃないよ」
体を少し離されてようやく見た瑛太の顔は、空と同じ、赤色に染まっていた。