さよなら、ありがと。
3.
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卒業式当日は、瑛太の言う通り空には真っ青な絵の具が広がっていた。


練習では退屈だった式も、今日は身が引き締まる思いでいっぱいで、厳粛に行われていった。


式の後は、クラスの友だちと一緒に写真を撮ったり、寄せ書きを書いたりした。


別れはやっぱり淋しくて、話は全く尽きることなく、いつまでもあたしたちは騒いでいた。


反面、どんどん終りが近づいていく。


皆その事に気付いているのに、敢えて目を背けているのだ。


ようやくクラスでの騒ぎが静まってきた頃、あたしは瑛太を探した。


瑛太はやっぱり裏庭にいた。


「ここにいたんだ」

「おう」

「友だちは良いの?」

「もうお開きになったよ」


昨日までとは少し違う、彼氏彼女というのはなんだか照れてしまう。


瑛太もそうなのか、やたらぎこちない。


だからなのか、ん、とだけ言ってあたしに右手を突きだした。


疑問に思いながら、とりあえず受け取る。


渡されたのは、学ランのボタンだった。


「何これ?」

「何って、第2ボタン」

「第2ボタン?」

「そ。卒業って言ったらやっぱこれでしょ」


恥ずかしそうに言う瑛太の学ランの二つ目のボタンは確かに無くて。
その考えに思わず笑ってしまった。


「なっ!お前人のプレゼントを笑うなよ」

「だって第2ボタンって!漫画の読みすぎでしょ」

「いらないなら返せよ」

「いえ、ちゃんと貰いますー」


あたしはふふっと笑って、小さなそれを大事に握りしめた。


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