幸福の涙。-Last dance-
1.Good night,sun.
「セイちゃん」
「何?…って、もうちゃん付けは止めろって」
「ぼーっとしていたから呼んでみただけ。それに今更呼捨てにも出来ないよ」

これは学校帰りの信号待ちでの出来事である。
俺の幼馴染であるアキは穏やかで、
本当に男なのかと思うほどに気の優しい奴だった。
その関係のせいからか、小さい時からアキは俺をちゃん付けをする。
俺はそれが最近嫌になった。だから今日こそは、ときつく言い放った。
それでも奴はちゃん付け。アキには負ける。
男がちゃん付けするのはふざけあっている時で充分。
だからたまに実は女の子でした、と言う落ちであって欲しいと願ってしまう。

たまに憎らしくて、無邪気なアキ。
俺がしっかりしないと、と思う。別に恋ではない。同性だし。
だけど弟のように守ってやりたい存在になっていたのは事実。

今日は俺の誕生日。その決意を言おうと決めていた。
傍にいてやるとしっかり告げれば、
きっと笑顔で“嬉しい”と言ってくれるだろう。

「もういい…ああ、そうだアキ」
「何……?あっ!」

最後の“あっ”が聞こえずに俺はそのまま話を続けた。
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