幸福の涙。-Last dance-
「よかった…無事で……守れなくてごめんな?今度は絶対にこんな目には合わせないから」

俯きながらそう言った。
意識が戻っていないから、絶対に聞いていないと思う。
だけど何かを話しかけなければ、
アキが何処かへ行ってしまいそうな気がした。

「本当にっ?!」

今声が聞こえた。それは間違いなくアキの声であって。
だけど何か可笑しい。アキは事故のせいで弱っているはずだ。
なのになんだ。何事もなかったかのような元気の良い声は。
ああ、幻聴か。そうだそうに違いない。俺の思い込みが作った産物だ。

「まったく、何やってるの。アキの奴。これでも妾の後世?!
でも本当に此処って便利ですわ…それにこれは好機です」

本当に何やってるんだろうな、アキ…ん?妾?あいつは自分の事を“僕”と言うはずだ。
それに女言葉。何なんだ、本当に幻聴なのか?

「…アキ?」

恐る恐る見上げてみれば、マスクを外しアキが身を起こしている。
しかも元気そうに。身体、大丈夫なのか?

「セイ様…お会いしたかったわ…!」
「な、何なんだいきなり…?!お前とは毎日会っているだろうが」
「え…?ああ、そうでしたわ」

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