幸福の涙。-Last dance-
訳が分からない。セイ…様?お会いしたかった?
頭の中で更にクエスチョンマークが増えた。

「申し遅れてごめんなさい。妾の名前はサクコ。アキの前世ですわ」

前世?サクコ?お前はアキだろう?
何言っているんだ。何時ものアキに戻ってくれよ。
アキの姿をしたサクコと言う名の女の言葉のせいで更に頭が混乱する。

「なあ、アキ。元に戻ってくれよ!こんな悪ふざけは止めるんだ。身体に障る」
「セイ様、アキは今長い眠りについております。
そうでなければ妾は此処にいません。落ちついて下さいませ」

こんな状態で、何をどう信じれば良いんだよ。
どうやって落ちつけば良いんだよ。
アキを返せよ。…ああ、そうか。もし本当ならばアキを起こせば良いんだ。

「アキを返せ、じゃなくて。アキ、早く起きるんだ!」
「無駄ですわ…でも、そんなセイ様も素敵ね…」

頬を赤らめるアキの姿をしたサクコ。あいつは何かを隠すのが下手だ。
だから誰かを誤魔化そうとする演技も出来ない。
結局認めざるを得ないのだった。

「こんなの嘘だ!」
「アキ!」

俺が叫んだと同じに高い声音が聞こえた。アキの母さんであるタカエさんだった。
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