幸福の涙。-Last dance-
2.New moon.
翌日にはアキが事故に遭った事がクラス中に知れ渡っていた。
俺も薄々感付いていたけれど此処で確信する事が出来た。
アキは幼稚園児を助ける為にはねられたのだと。
道理であの子が泣いていた訳だ。
アキの机を見ながら、あいつらしいなと思ってしまった。
誰かがお見舞に行こうと言い出した。
…やばい。あんな状態を見せる訳には行かない。
だからまた言い訳を作らないといけなくなった。

「駄目だ。昨日あいつと会って来たけど、精神的に辛いみたいでな…
あまり人に痛々しい姿は見せたくないんだと」
「お前は良いんだ？」
「もう既に見ちゃったし、俺だけならまだ耐えられるんだってさ。」

ごめん、アキ。お前を奪ったサクコという奴のせいで、
こんな事を言わなければいけなくなって。
もう少しの辛抱だからこれくらいは許してくれないか？

「なら仕方ないな…アキに早く戻ってこいって伝えてよ」

ああ、と言って笑って見せた。
だけど皆を騙す結果になって後ろめたさも感じた。
この事、先生にも言っておかないとな。でないと見舞いに行きそうだ。
そう考えていたらチャイムが鳴って、国語の授業が始まった。
< 8 / 10 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop