アンバランス ヘヴン


─あんなに泣いたのに、涙は枯れないんだ…


涙と同じ味がする、この果てしない海くらい涙を流せばあたしたちは、もう泣かずに済むのかな。



「咲空…」


「っ…!」


ぎゅっと、後ろから抱きしめられた。


あぁ、力強いこの腕で最後に抱きしめられたらのは、彼女が死んだすぐ後だった…



「…離して」


「咲空」


「離して」


「…てる」


「ナツメ、」


「愛してる」



愛してる愛してる愛してる―


何度も何度も、囁き続ける。




< 10 / 31 >

この作品をシェア

pagetop