氷狼―コオリオオカミ―を探して
チェイサーはあたしが落としていた弓をくれた。

それからあたしの髪を手櫛ですいて撫でつける。

やっぱり前にもこうされた気がする。


「お前は妖魔の暮らしに飽き飽きするだろう。俺と違って」

チェイサーが言う。


「どうしてそう思うの? 好きになれるかもしれないじゃない」


「なれないよ。来る日も来る日も冬だけを目にする。俺は気楽だから妖魔になったが、この生活がいいと思っている訳じゃない」

チェイサーはあたしの頭を胸に抱いた。

「お前とずっといたいが」


あたしだって一緒にいたい


あたしは心の中でチェイサーにそう告げた。


あたしの中にも迷う心はある。

でも繭の中にとどまりはしない。

いつだって選択肢なんて、そう沢山あるわけじゃない。

その中から選んで前に進むだけ。


あたしはこの迷いを乗り越えてみせる


必ず
< 103 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop