氷狼―コオリオオカミ―を探して
「あそこから下りられる」


チェイサーが指さしたのは道路脇にある駐車スペースだった。

奥にはガードレールの代わりに通行止めの標識がついたポールがあった。

近寄ってみると、標識の向こうは手すりのついた階段になっている。


「ここ下りるの?」


夏場ならどうってことはないのだろうが、延々と下に続く雪まみれの石の階段にはさすがのあたしも躊躇した。


「ここで待つか?」

チェイサーは下が気になるのか、上の空であたしにきいた。


「冗談じゃないよ。行くに決まってんでしょ!」

あたしはプリプリ怒りながら、通行止めのポールをまたいだ。


風が強い。


チェイサーはあたしがちゃんと手すりをつかんだのを確かめてから、また下を覗く。


「しまった! あいつら、海から逃げる気だ」


「海からって、どうやって?」


「凍らせてる!」

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