氷狼―コオリオオカミ―を探して
「今日は寒いからね。暖かくして学校へ行くのよ」


ママったら、朝から何回同じこと言えば気が済むんだよ


「分かってる」


「もう、最近の若い子は薄着過ぎるのよね。体を冷やしちゃよくないのよ」


「それも分かってる」


あたしは多少ウンザリしながら家を出た。


雪こそそれ程積もっていなかったけど、外は氷の世界だった。


街路樹の幹にも枝にも、吹き付けた雪がそのまま凍りついて氷の彫刻みたいになっている。


あたしは、さっき馬の乗り手が立っていたあたりをチラッと目の端で確かめた。


よかった

誰もいない


ほっとして、あたしは駅への道を歩きはじめた。

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