氷狼―コオリオオカミ―を探して
あたしの声に氷狼がこっちを見た。

琥珀色の目があたしを見据える。

雪まじりの強い風があたしの髪を揺らした。


ああ、そうか――


あたしは妙に納得した。


あれこそが<冬>だ。


貪欲にすべてを飲み込み、吐く息はすべてを凍らせる。


汚れのない純白さは荘厳で美しくさえあるけれど

立ち向かえるとは思えないほど大きいけれど


「白魔達は冬を狩り春を呼ぶのかも知れないけど」

あたしはつぶやくように言いながら矢を番えた。

「あたし達人間は冬を畏れ、冬と共に生き、冬をねじ伏せて来たんだ」


弓の弦を力一杯引き絞る。


「負けない!」
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