氷狼―コオリオオカミ―を探して
あたしはチェイサーに近寄ってギュッと抱きしめた。


「ありがとう。幸せな時間をくれて」


「お前を忘れたくない」


「あたしが覚えてる。全部覚えてる。冬が来たらあなたの部屋の窓を見上げる」


あなたがそうしたように


「ろくでもない人の子の世界になど戻りたくない」


「嘘つき」


あたしは彼の前髪を指でかき上げた。


「お前だけが俺の希望だったのに。お前だけがなんの迷いもなく俺を愛してくれたのに」


「これからも愛してる。あなたがあたしを忘れても、ずっとずっと愛してる」


チェイサーの体が薄れていく


「今度は人間でいることを楽しんで。あたしは永久凍土の夏を見に行く」
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