氷狼―コオリオオカミ―を探して
やがて彼の体は光る輪郭になった。


「チビ、ハルカ――」


何か言っているけれど、もう声さえも微かになってあたしには聞き取れない。


「幸せになって」

あたしは呪文のように言い続けた。


そうして


チェイサーは氷狼のマントを残して消えた。


あたしはマントを拾い上げ頬を寄せた。

妖魔だった彼は温もりも匂いも残しては行かなかったけれど

それでもあたしはマントを抱きしめて、やっと自分に泣くことを許した。


小さな手が肩に触れた。


「これでよかったのかね?」

イタチの声が聞こえた。


「うん」

あたしは顔を伏せたまま答えた。
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