氷狼―コオリオオカミ―を探して
やっぱり、あれは夢だったの?


「わたしもきいていい?」

女の子が言った。


「どうぞ」


「これ、どこで拾ったの?」

女の子の手には、色あせたピンク色のカッターナイフがあった。

「病院に運ばれた時、お姉さんが持ってたんだけど」


「森林公園で」

あたしはドキドキしながら言った。


「やっぱりそうか……これ、わたしのなの。名前が書いてあるから、すぐ分かった」


「森林公園で落としたの?」


女の子はちょっと口元を引き結んだ。

「捨てたの。わたしにはもう必要ないから」


この子はもう迷っていないんだ。


「いらないなら、あたしにくれない? あたしにとってはお守りなの」


チェイサーと二度と会えなくても、それがあれば夢じゃなかったと信じられる。
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