氷狼―コオリオオカミ―を探して

ショウ君?


「お帰り、遥」


彼は笑顔で言ってくれたけど、あたしはその場に立ち尽くすことしかできなかった。


あたしの中では、人間に戻ったショウ君は二十七歳の男の人になるはずだった。

でも、目の前にいる彼は最後に見た時のままだ。

どう見ても高校生

世界は彼から十年の月日を奪いはしなかったのだ。


「誰?」


あたしが呆然として言うと、弟が驚いた。


「姉ちゃん? ショウ君だよ?」


それは分かるけど……


「母さん! 姉ちゃんがおかしい」

弟は居間に入ってきたママに言った。

「ショウ君が分からないんだ!」
< 158 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop