氷狼―コオリオオカミ―を探して
しばらくして、ノックの音がした。


返事をする前にドアが少しだけ開く。


「遥、起きてる?」


ショウ君の声だ。


「起きてるよ」


あたしは泣き顔を見られたくなくて、慌ててうつぶせになった。


入っていいかとききもしないで、ショウ君は近くまで来てベッドの端に座った。

それが許されるほど、あたし達は親しいって事だ。


優しい手が、あたしの髪をそっと撫でた。


「本当に俺が誰か分からないのか?」


「分かるよ。ただ一緒に過ごした記憶がすっぽり抜け落ちてるの」


「元気出せよ。すぐに思い出すさ」


存在しない記憶をどう思い出せって言うの?
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