氷狼―コオリオオカミ―を探して
「ママ、翔くんと犬の散歩行ってくる」


キッチンに向かって声をかけると、『いってらっしゃい』と返事。

その後に

『いい加減、彼女にしてもらえばいいのに』ってブツブツ言っているのが聞こえた。


大きなお世話だよ


翔くんはあたしの家の前で腕を組んで立っていた。

無表情な顔はチェイサーを思わせた。


「来たよ」

あたしはぶっきらぼうに言った。


翔くんの犬は白いパグ。

黒い大きな目で怯えたようにあたしを見上げた。

犬の祖先は狼だっていうけど、この子は絶対に違う。

なんだってこんな弱そうな犬がいいわけ?


翔くんは右手に犬のリードを持って、左手を黙って差し出した。
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