氷狼―コオリオオカミ―を探して
川沿いの桜並木の下をあたし達は手をつないで歩いた。

春の風はまだ少し冷たいけれど、桜の木は淡いピンク色に包まれていた。


今年はいつもの年よりも春が来るのが早い気がする。


ひときわ大きな桜の前で翔くんは不意に立ち止まり、上を見上げた。


「綺麗だな」


翔くんがしみじみと言った。


「そうだね」


あたしも桜を見上げた。


「遥」

桜を見上げたまま翔くんがボソッと言った。

「俺を嫌いなのか?」


「好きだよ」


「ずっと避けてるのに?」
< 168 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop