氷狼―コオリオオカミ―を探して
もともと、普通の願い事で帰って来た訳じゃない

今までここにいられた事の方が奇跡なのかもしれない。


ううん

諦めちゃダメ


あたしはやりたい事を自由にできるはず。

翔くんが願ってくれたんだもの



冬がすべてを覆いつくして年が明け、天気が大荒れになった翌日、あたしは街に出た。

コートのポケットにライターと美咲ちゃんのカッターナイフを忍ばせて。


夕暮れの街を行くあてもなく行ったり来たりしていると、白い大型犬が近寄って来た。


「よう、トムボーイ。どうした? 浮かない顔してるぜ」

犬がしゃべった。


「狐?」
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