氷狼―コオリオオカミ―を探して
覚悟の果てに

写真がない。


同じ年の幼なじみとしての翔くんとあたしの写真――これは最初からあるはずがない。

でも、高校生の翔くんと幼いあたしの写真もない。

絶対あったはずなのに。


あたしは天井を見上げてため息をついた。


まるで最初から存在していないみたいに、ってことね


翔くんの記憶を呼び覚ますものが見つからないまま春が過ぎた。


あたしに残された時間がなくなっていく。


あたしの髪はますます白っぽくなり、それを隠すためにあたしは髪を染め、カラーコンタクトを入れている。


あたしは気を取り直し、またクローゼットの中を掻き回して過去を探しはじめた。


「おい、遥」

ドアが開いて翔くんが顔を出した。
< 187 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop