氷狼―コオリオオカミ―を探して
「それはあたしのお守りだよ」


「お守り?」


翔くんはあたしを見た。

それから何かを振り払うように頭を振った。


「小学生の時に、近所の家の赤ん坊を母親と見に行ったんだ。あんまり小さくて驚いた」


それはあたし?


「俺が覗き込むと、よだれだらけの指で俺の髪を引っ張って、それから俺の指を握って笑った。俺のことが好きなんだと思ったよ」


大好きだったよ


翔くんは自分の目を押さえた。

「この目の色が嫌だった。周りの誰もが俺をジロジロ見る気がして。あの子だけが『海の青』と呼んで、それで……それで……」


翔くんが探るようにあたしを見つめる。


「遥、あの子はどこへ行った?」


あたしは唾をゴクッと飲んだ。


「あなたの目の前に」
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