氷狼―コオリオオカミ―を探して

「違う。お前は俺と同じ年じゃないか」


きっぱり否定されて、あたしは観念した。

とうとう彼の記憶を呼び覚ますことはできなかった。

翔くんの記憶は、幼い頃のあたしを別人にすり替えようとしている。


「あの子はもっと小さくて……死にかけていて」


気温の暑さにもかかわらず、寒気がした。

あたしの中を冷気がめぐっていく。

このまま、冬が来る前にあたしは妖魔になってしまうみたい


「俺は……あの子のために」


お願い。真実を思い出して!

あたしをあなたの側にいさせて


翔くんはポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。

そして、それをしばらく見つめた後、つぶやくようにボソッと口を開いた。


「チビ、俺はなぜここにいる?」
< 193 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop