氷狼―コオリオオカミ―を探して
唇が重なる前に思いっ切り蹴りを入れた。


チェイサーがスッと体を引いたので効果は半減してしまったけれど。


「気の強い娘だな」

チェイサーは面白がるように言った。

「それくらい気迫があれば氷狼を捕まえられるだろうよ。捕まえられなくとも、俺と来ればいいしな」


「絶対にこの街で捕まえる!」

あたしは意地を張るように言った。

「家族や友達が心配するもの」


すると、チェイサーは打たれたように怯んだ。


「家族は心配しない。俺達の世界にいる間、お前は人々の記憶から消えるのだ」


消える?


「それは……誰もあたしを覚えていないってこと?」


チェイサーはうなずいた。


「まるで最初から存在していなかったかのように」


「もしこのまま帰る事ができなくても、誰も悲しまないの?」


「そうだ」


そんなの嫌だ


だってそれじゃ、あたしが生きてきた17年という月日が何の意味もなくなるじゃない。
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