氷狼―コオリオオカミ―を探して

日没までにはもう少し時間があって、弓の練習の他にすることもないあたしは暇だった。

チェイサーに『ここの屋上へ行ってみるか?』と言われ、二つ返事で後をついて行ったのは退屈だったから。


それだけ

絶対にそれだけ


石造りの砦のような古い建物の屋上からは、雪に覆われた街が見えた。
空は信じられないほど真っ青で、空気がピンと張り詰めているようだ。

少し先にあたしの学校が見えた。


「ここって、普段のあたしには見えないんだよね」


「ああ。空地か無人の古い建物にしか見えないだろうな」


「生まれてからずっと住んでる街なのにな。変な感じ」


「雪が解けたらこの景色がどう変わるのだろうと、いつも思う」


「最初にアスファルトの黒い色が見える。それから桜でピンク色に染まって、若葉の緑。夏空の青、白い雲、ヒマワリの黄色。秋のモミジの赤になって――」


「また冬の白か」
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