もっと早く‥
『幸大




私幸大が好きでたまらない。


私どうしたらいい?


こんな汚い体で、幸大に好きなんて言えない。


でも好きなの。好きで好きで死にそう。


私が普通の家で、普通に生きてる女ならよかったのにね。


自分の中にこんな感情があるなんて知らなかった。


幸大に出会ったときは私と同じ人がいる。


ただそう思った。無表情で何を考えてるのかわからない。


でもそれは幸大も思ったかもね、私を見て。


2年に上がって同じクラスになって、初めて交わした言葉覚えてる?


“何で笑わないんだ?” “そっちこそ。”


今思えば不思議な感じ。今はお互い二人のときだけ笑って。


それが今では普通で。無表情だったことなんてずっと前に感じる。


兄にレイプされたことを知っても幸大は幸大だった。


嬉しかった。子供ができない体だと知っても俺が幸せにするって言ってくれて。


家出をしても幸大は怒らなかったよね。いつも私のこと心配してくれた。


私迷惑ばっかかけてるよね。でももう少しだけ、幸大のそばにいたい。


高校卒業したら、幸大を解放するから、今だけは一緒にいさせて?


ヤスが言ってくれたの、誰にでも幸せになる権利があるって。


ヤスっぽくないでしょ?だけど嬉しかった。


私も幸せになっていいんだって思えた。


でもね、幸大のそばにいられるだけで幸せなんだよ?


他に何もいらない。ただ、そばにいてほしい。


ただそれだけ。幸大と同じ空気を吸って、同じ空間で同じ時を過ごす。


それ以上幸せなことない。
< 180 / 313 >

この作品をシェア

pagetop