さよなら、記憶
「…ま、行かねぇけど」
「はぁ?」
郁也らが小さくなった頃に玲太がボソッと呟いた。
「だってお前居ねぇと楽しくないだろ?」
あっさりとこんなこと言ってしまうんだと少々驚く。
「俺がいなくてもれーたは楽しいだろォ?」
酒が回っていて上手く話せない。
これじゃただの酔っ払いだ。
否定はできないけど。
「楽しかったら今ここにいねぇよバーカ」
軽く鼻で笑って俺の髪をくしゃっとする。
ワックスで整えた髪がいとも簡単に崩されてしまう。
夜だからどんな髪型だろうと気にしないが。
外をうろつくのは同じように柄の悪いヤクザのような人からいちびった中学生。
俺らのような人には昼間より夜のほうが楽しいらしい。
「俺はここで大丈夫だからアイツらと合致してこい」
「無理すんなって」
「俺がいいっつってんだろーがよォ」
「はいはい酔ってるくせに無理してんじゃねーよ」
またぽんっと一回頭を軽く叩かれる。
玲太だって俺と同じくらい飲んだくせにこんなの不平等だ…。
「惚れたヤツにはいいとこ見せてえだろ?」
「…バーカ!!」
俺が叫べばまた笑って頭を叩いてくる。
玲太はいつもそうだ。
人前では俺を男と同等に扱ってくれる。
だけど二人きりになれば、未亜や葵と同じような扱い。
女だって言われるのいやだって分かってるから、何も言わずに女と同じ扱いをしてくれる。
それが玲太なんだ、