P a i n .
人波を器用に避けながら、あの場所へとゆっくり向かう。
階段を昇ると、一気に生徒の数が少なくなった。
まあ、仕方ないか。
一番端にある美術室、と書かれたプレートを確認してから、ドアに手をかけた。
─すうっ…はぁ…
深呼吸をして、ドアを開けた。
ツン、とした、美術室の臭いが真っ先に鼻にくる。
─何度来ても、やっぱりこの臭いは嫌いだ。
顔を少ししかめながら、いつも座る窓側のテーブルの席へと歩いた。
美術室は、相変わらず騒がしい。
各テーブルごとに座り、スケッチブックを見合ったり、ただお喋りしていたり、本を読んでいたり、
十数人の部員全員がバラバラな動きをしている。
まあ、始まる前だし、どうでもいいのだけれど。
「はーい、みんな静かに。 ミーティング始めるよ~。」
前髪を横に真っ直ぐ揃えたショートカットの彼女がそう言いながら前に立った。
途端にみんなが静かになり、一斉に彼女の方を向いた。