P a i n .





 「おはよう、涼!」

 「あ、おはよ瑞希。」


教室に入ると、真っ先に友達の藤井 瑞希(フジイ ミズキ)が話しかけてきた。



長いストレートの髪を靡かせながら、


口角を上げてトコトコとひよこのように僕の方へと近付いてくる。



背丈が低いのと、彼女自身が可愛いせいで、その動作にキュンとくる自分がいた。



いや、何考えてんだ自分。


 「? 涼、どうかした?」

 「え?いや、何でもない。」

 「そっか。」



 「みずきー!」

 「は~い!」



近寄ったのもつかの間、瑞希は他の子の方へと行ってしまった。




…これだから、女子はめんどくさい。


止まり木にジッとしていない。


手を掛けなきゃ、
留まらせるきっかけを作らないと簡単に離れていく。



僕も、人間も、浮き世も、所詮そんなものなんだろうけどさ。




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