秘密のMelo♪y⑥*イギリス編*
ますます強く抱きしめてくれるかっくんにしがみついた。
「いやだ…」
「…うん」
「いやだよー…!」
「…ん」
「バイオリンできなくなっちゃうなんて…っ、いやだぁ…!」
「…っ…」
…ずっと、目を逸らしてきたような気がする。
かっくんが死んでしまったという報せと。
バイオリンが出来ないという事実と。
かっくんがいないのに、彼の赤ちゃんはあたしの中で育っているということと。
あまりに一気に襲ってきて、すべてから目を逸らしていた。
だけど今…残されたのは、左手の再起不能という問題だけ。
向き合わざるを得なかった。
「うまくなくていいの…っ」
「ああ…」
「誰にも聞いてもらえなくたっていい…!」
「…っああ…」
「だけど好きなんだもん…やりたかった…!」
嗚咽を抑えて言葉を絞り出すと、かっくんはいちいち返事をしてくれた。
時折…声がつまってるような気がしたのは、気のせいかな…。
「…っう…っ、やりたかったの…っ!」
小さい頃から…物心つく前から、ずっと音楽と…バイオリンと、寄り添って育ってきたんだ。
それが失われるなんて…あたしには、到底想像もつかなかった。