秘密のMelo♪y⑥*イギリス編*
自分の眉間に皺が寄るのが分かった。
最初…真裕から聞いたとき。
あのときは、震える真裕を抱きしめて、どうにか支えてやろうと必死だった。
だけど実際…俺も相当ショックを受けた。
もう何年も…何年も焦がれ続けていた音。
あれがもう聞けなくなるのかと思うと、胸が締め付けられそうだった。
でも、それよりも。
真裕のことを思うと、俺まで泣いてしまいそうで。
やりたかったと泣くあいつの小さな体から、苦しみがにじみ出てくるようで。
真裕から…バイオリンを奪うなんか、誰にも許されることじゃない。
藤峰真裕の音楽を、一体どれだけの人間が愛していることか。
数ヶ月前の復帰で、世界中が改めてそれを実感しただろう。
それが消えてしまう。
絶望すらも感じるくらいだ。
「真裕はね…本当に強い子だと思ってたんだ」
「……」
「私にはそういった弱みを見せないからね。…だけど君には違った」
違わない…。
こいつは俺にも弱みを見せようとしなかった。
ただ、限界だったんだろう。
母を失ったことで…今までの積み重なった小さな我慢が、爆発した。
それでやっと…俺も気付けたんだ。
「真裕は、大丈夫だろうか?」
「え?」
心配そうな表情で真裕を見つめる洋平さん。
俺には…その表情に、見覚えがあった。