秘密のMelo♪y⑥*イギリス編*
『初めはNYの…奥様とは別の病院に運び込まれました。しかしあのときはどこも人手不足で、あれほどの重症を診ることはできなかったそうです』
あれほどの重症…。
かっくん、そんなにひどかったの…?
無意識のうちにぎゅっと彼の手を握りしめながら聞き入った。
『言い方は悪いですが…俗に言うたらい回しというやつです。一度は受け入れ先が見つかったのですが、その病院の力で彼を救うことは恐らく不可能だった』
「…!」
『N病院は世界でも有数の、とても設備が整った、優秀な医者も多数いる病院です。あそこなら…という思いで、そこの医者はN病院に彼を連れて行ったわけです』
「ニューヨークから…?」
嘘でしょ…?
もう言葉も失って、先生とかっくんを交互に見比べた。
この人……ニューヨークからこんな遠くまでたらい回しにされちゃったの?
『もちろん各専門医が付き添い、万全を期しました。おかげで彼は、N病院で一命は取り留めたんですが…』
そこで先生は言葉を切った。
あたしはこの二ヶ月、こういう間を何度聞いてきただろうか。
おかげで、人が言葉を切ったこの瞬間が大嫌いになった。
『……しかし、やはり怪我の程度は著しく重く…それが限界でした』
『それ……って?』
『命を繋ぐことです。それが限界で、意識が戻る保証までは出来なかったそうです』
「!」
命を繋ぐのが精一杯…?
…あまりに信じられない言葉だった。
じゃあ今も…?
今も、いつ死んじゃうか分からないってこと…!?