【短編】魔法使いとシンデレラ
「ねえ、君はどうして嬉しそうじゃないの? これで舞踏会に行けるのに。まだ足りない物がるなら教えてほしいな」
「足りない物なんて無いわ。十分すぎるくらい」
「じゃあどうして?」
「それは、きっと、あなたが悲しそうだからよ」

意外だった。顔には出さないようにしていたのに。
シンデレラはとても鋭い。

「僕のせいだったんだね……。ごめんね。でも僕のことは気にしないで。君は王子様と結婚して幸せになるんだ」

僕がそう言うと今度はシンデレラが悲しい顔をしてしまう。

「どうしてそんな風に言うの? あなたが悲しそうなのに舞踏会に行って、王子様に見染められたって幸せになんかなれないわ」

シンデレラは優しい。そしてずるい。

こんな時にまで僕のことを気にかけるなんて……。

そんなことを言われたら隠せるわけがないじゃないか。

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