あと一歩、もう一歩。
中学3年生の時だった。
大陽が随分と荒れて、私が受験勉強に集中出来なくなったので、しばらく隆の家に泊まっていたことがある。
おばさんも喜んでくれたっけ。
「みやちゃんがうちに泊まるなんて久しぶりね~」
なんて言って。
中学生でも、幼馴染みは幼馴染みなのだ。
「いや~、隆ん家落ち着くわ。」
そう言って勉強する隆の前で思い切り伸びをする私。
「…自分家だと、大陽くんがうるさいから集中出来ないんだって?」
こっちも見ずに呟く隆を見て、少し嫌な汗が流れる。
「…大陽、毎日なんか蹴っ飛ばすんだよ。
イライラして、私にも怒鳴り散らすし。
母さんいないと、手に追えないよ。」
横にあるテレビを睨んで、呟く私。
「…ふーん…。」
隆はそう言ったきり、なにも言わなくなった。
なんとなく、気まずい。
「………たか」
「雅はさぁ、誰か身内の人が亡くなったこと、ないんだろ。」
隆と呼ぼうとした声と、その声が重なった。
隆は、今度はしっかりとこっちを見ていた。