あと一歩、もう一歩。


「…なんで…?」


私が呟くと、隆は笑った。
泣きそうな目をして、笑った。


「じぃちゃんが、公園でよく話したのはさ、俺が会ったこともないばぁちゃんのことなんだ。

ばぁちゃんは、母さんが生まれてすぐ死んじゃって。

じぃちゃんはずーっと1人で母さんを育ててきたんだ。」


私は隆から目を逸した。


「…じぃちゃん、ばぁちゃんがすごい好きだったんだ。
だから…再婚もしないで、ばぁちゃんとの思い出に浸って…。
いつも、言うんだ。

隆にも会わせたかった。
じぃちゃんも、会いたいんだ。
じぃちゃんが天国に行く日が来たら、会いたいんだ。
こんなお爺さんな僕には、若いアイツは気付いてくれないかも、しれないけど。


って。
だから、俺、じぃちゃんは今ばぁちゃんに会えて、幸せなんだって、思ってる。」


ポタッと、涙の粒がノートに落ちるのがみえた。

それでも私は隆の顔を見なかった。

いや…見れなかった。

隆がそんな思いをしていたなんて、知らなくて。
そんな自分が、嫌だった。




< 12 / 13 >

この作品をシェア

pagetop