あと一歩、もう一歩。
「…なんで…?」
私が呟くと、隆は笑った。
泣きそうな目をして、笑った。
「じぃちゃんが、公園でよく話したのはさ、俺が会ったこともないばぁちゃんのことなんだ。
ばぁちゃんは、母さんが生まれてすぐ死んじゃって。
じぃちゃんはずーっと1人で母さんを育ててきたんだ。」
私は隆から目を逸した。
「…じぃちゃん、ばぁちゃんがすごい好きだったんだ。
だから…再婚もしないで、ばぁちゃんとの思い出に浸って…。
いつも、言うんだ。
隆にも会わせたかった。
じぃちゃんも、会いたいんだ。
じぃちゃんが天国に行く日が来たら、会いたいんだ。
こんなお爺さんな僕には、若いアイツは気付いてくれないかも、しれないけど。
って。
だから、俺、じぃちゃんは今ばぁちゃんに会えて、幸せなんだって、思ってる。」
ポタッと、涙の粒がノートに落ちるのがみえた。
それでも私は隆の顔を見なかった。
いや…見れなかった。
隆がそんな思いをしていたなんて、知らなくて。
そんな自分が、嫌だった。