あと一歩、もう一歩。
幼馴染み
「明日から夏休みとなりますが、受験生であるという自覚を忘れず、日々努力すること、以上!」
担任は鋭い目で生徒である私達を見回す。
日直である隆はその目に気付かなかったのか、脳天気な声で、
「きりーつ、気をつけ、礼」
と、号令をかけた。
みんなも気の抜けた声で、
「さよなら~」
と言って鞄を手に持つ。
高校3年生の夏。
高校最後の夏。
そこそこの進学校であるこの高校は、大学附属であるからか、比較的みんな穏やかな日々を送っている。
「この後どうする~?」
「アイスでも食べよっかぁ~」
女子高生らしくキャピキャピと騒ぐ女子達の傍らで、黙々と鞄に荷物を詰める私。
その目の前に現れる大きな黒い影。
「……雅、帰るぞ。」
顔をあげれば、いつもどうりの人。
津川 隆(たかし)
私の、幼馴染み。