あと一歩、もう一歩。


「雅は、ないの?」


隆は、私より背が高いから、自然と体を屈ませて、私の目を見る。


私の夢。
小さい頃は、隆のお嫁さん…だった。

今はもう、叶わないってわかってるから、そんなこと言わない。


「…小説家にでもなろうかな。」


パッと思い付いた職業を、パッと口に出すと、隆は、


「おー!
なんかかっこいいな!
雅っぽいし、いいじゃん!」


と大絶賛。


「待って…雅っぽいって、
もしかしてあたしが暗いから、家で出来る仕事がお似合いって意味!?」


ややショックを受けてそんなことを聞くと、隆は笑って首を横に振った。


「雅は明るいでしょ。」


「なにその分かりやすい嘘…」


「嘘じゃない。
雅は、そうだな…いつも、感性が豊かなんだよ。
空を見て、海を見て、山を見て…いつも感動してるだろ。
それでなんか、俳句とか読むだろ。」


「…それ、中学の俳句コンクールの前だけでしょ。」


なにを言い出すかと思ったら。

でも、覚えててくれてちょっと嬉しかったり。


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