逆転リバース

「ってか、どんな格好でそんなこと言ってるの?」

『良いだろ? 中身は間違いなく俺なんだから……って、ヤバッ誰か近付いてきた』


本当に焦る声が聞こえてきた。
どうやら、同じく芸能人らしい。


『椿ちゃん、今帰り?』

『え? はあ……』


声を作ってる。
止めたいと言っても、社長は止めさせてくれないからしばらく我慢の毎日。

せめて、ルーくんが大きくなる前になんとかしたい。


『今から飲みに行かない?』

『え゛!?』

『ああ、他にも人がいるから気にしなくて良いよ』


嘘のパターンだ。
相手が男だと分かってても、嫌な気分になる。

私の旦那だと大声で言いたいけど……。


『あれ? 電話中だった? 女の子だったら呼んでね』

『……』

「椿、ちょっと声を変えようか?」


気にくわないらしく、無言のままだった。


『ごめんなさい。用があって……』

『良いじゃん』


しつこいな……。もしかして、女関係が絶えないあの人かな?
こうなったら、厄介だよ?


< 10 / 57 >

この作品をシェア

pagetop