逆転リバース
「……おい、俺の妹に何してんだ? てめぇいい加減にしねぇと昼に歩けねぇ格好にするぞ!!」
ありったけの大声で叫ぶ。
しかも、誰が聞いても男だと思えるようなドスのきいた声で……。
こんな役やっといで良かったぁ。
『ひっ!!』
立ち去るような足音が聞こえて、体の力が抜けた。
ベビーカーの取っ手に額を当てる。
怖かった……。
『……おい』
「あ、大丈夫だ――」
『うるせぇんだよ! たまたま耳から離してたから良かったものの。いきなりやるな!』
「……なによっ、助けてあげたのに」
『こっちにも男としてのプライドもあるんだっつーの! 自分の身くらい自分で守る! 今からそっちに行くから待ってろ』
「あ……ちょっ……切られた」
言いたいことばかり言ったなもうー!!
私だって言いたいことあったのに……。
そりゃあ、椿のプライドを尊重したいけど、私だって椿が奪われるの嫌だもん……。