とりあえず王道に現実主義者を混ぜてみよう
とりあえず深呼吸。
何事もなかったように再び弁当に箸をのばすと
「悪かった…」
ぼそりと、呟いた声が聞こえた。
社会不適合者が、あの、何様俺様海翔様が
謝った。
え、マジか。
由宇の箸から卵焼きがボトリと落ちた。
ちょ、由宇、口開けて呆然としてる場合じゃないから。スカートの上に卵焼き落ちてるから。
――じゃなくて
「謝んなくて良いです」
「は?」
「その代わり、貸しイチ、ということで」
「…やっぱり気に入らねえ」
それは褒め言葉ですね分かります。
アナタに気に入られても(笑)、みたいな。
由宇はようやく卵焼きに気づいてアタフタしてる。
水木さんは、なんか微笑ましそうに私と男を見ている。
あんたは母さんか。
「とにかく、由宇か私がお願いしたことを一度だけ聞き入れてください。それでチャラです」
社会不適合者…言いにくいな、龍崎でいっか。
龍崎は睨むように私を見る。
「『付き合え』とか、そういうのは」
「ないないないない。おぞましい…じゃなくて、そんな身の程知らずなことは頼みません」
「…ふん」
この『ふん』は了承と受け取っておこう。