記憶 ―流星の刻印―
ガサガサと茂みの立てる葉の音と、私の衣装の鈴の音。
その音が探すのを邪魔をして、時折「声」を確認する為に動作を止める。
「――揚羽ってば!」
「…何よ。大丈夫よ、どうせ猫とか…そうゆう……」
捜索を止めようとしなかった私は、大きな葉を持ち上げて、
固まった。
「…グルル…」
目が合った。
白い毛並みの小さな獣だった。
「……あら…」
見た事がない動物だった。
怯えているのか、こちらを見上げ、威嚇して牙を出している。
「…――虎!虎だよ!揚羽、離れて!肉食だって聞いた事がある!なんで、こんな所に!西の渓谷の地だけに生息するはずだろ!?」
蓮が後ろから私を引き戻そうと、グイグイと必死に腕を引っ張っていた。
「…グルル!グルルル!」
蓮が虎だという獣は、聞こえた声から予想した通りに弱っていて、草の上に伏せたまま体を動かそうとはしなかった。
確かに凶暴そうだけど…、
よく見ると足に怪我をしていて、沢山の血を流して周囲の草を赤く染めている。