記憶 ―流星の刻印―
それは…、
少し前にもあった。
空を飛ぶ朱い鳥を、
肉眼で確認した時と同じ。
――ドクンッ…
鳥肌が立つ様な、
急に寒気がする様な…。
瞳を、反らせなかった。
言葉も出なかった。
「………っ…」
――…何?
何なの、この人…
大人しそうに見えるのに。
横暴な王子様の陰に隠れている、弱そうな弟なはずなのに…。
何だか、怖い…
「……おい、嬢ちゃん?」
私の異変に気が付いた太磨が、心配そうな声をあげた。
「……太磨っ…」
私は、怯えていた。
掠れる声も震えている事に、自分でも驚いた。
「……どうした…。ほら、大丈夫だから…」
子供をなだめる様に、
後ろから太磨の腕に包まれて、
私はその体温にすがるように、
太磨の腕を虎白ごと、
ぎゅっと強く抱き締めていた。
視線は、反らせなかった。
しばらく、
冷たい表情の弟の瞳に、
捕らわれたままだった。